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札幌高裁判決の判決から見えてくるもの
ある裁判
去る5月26日に札幌高裁にて一つの判決が下りました。交通事故後の記憶力低下などの症状を、高次脳機能障害であると認める判決です。
これまで(自賠責などで)高次脳機能障害が認定されるためには以下の3つの要件を満たしているか否かがポイントとなっていました。
- 脳の損傷・萎縮が(MRIなどの)画像で確認できること
- 意識障害・昏睡が一定期間続くこと
- 人格の変化や記憶力の低下などが著しいこと
この裁判での原告(交通事故に遇った女性)は、食事をしたことを覚えていなかったり、突然母親を平手打ちしたり、という具合に、人格の変化や記憶力の低下は認められましたが、画像での脳損傷は認められず、また事故後に意識障害もありませんでした。
つまりこれまで障害認定される基準となっていた3つの要件のうち、実に2つを欠いていたことになります。にもかかわらず今回の裁判では女性の障害を認める判決が下されたのです。
相手が上告する可能性もありますので、これで決まったというわけでは有りませんが、このような判決が出たことは脳外傷にかかわっている人間にとって非常に大きな意味を持っているといえるでしょう。
見えてくるもの
この判決自身は、当事者やその周りの関係者にとっては非常に好意的に受け止められるでしょう。しかし「高次脳も社会的にも認知されてきていい感じじゃないか」と喜んでばかりもいられません。
この判決についてお医者さんたちの間では意見が分かれているそうです。
判決に対し、専門家の見解は真っ二つに割れた。同障害の著書がある益沢秀明・八千代リハビリテーション病院院長(千葉県)は「判決は根拠が薄 く、医学の診断領域に踏み込みすぎ」と批判。一方、この訴訟に意見を出した長沼睦雄医師(道立札幌肢体不自由児総合療養センター)は「日本の脳外科医の多 くは従来の基準に縛られ、検査で見逃している」と現状を変える必要を訴えている。
(毎日新聞 北海道地方版より引用)
確固たる根拠が必要であるという意見と、現状を変えなければいけないという意見があるようです。ポイントは、障害の認定には基準が必要なんだけど、現在の基準では本当にすべてを認定(選別)できているかわからないということですね。
どの世界にも、白でもない黒でもないグレーなポジションというのはあるもので、ましてそれが人間の脳みそというような非常に複雑なものが対象になっていれば、グレーだらけでもおかしくないと思いますし、それらすべてをきちんと振り分けることなど土台無理な話なのかもしれません。しかしグレーが白と黒のどちらに近いのかを測るメジャーは一つではないでしょう。もちろん、三つしかないわけでもないと思います。
振り分けるための線引きをするのは、一般人のわれわれには難しすぎるので専門家の方に任せるしかありませんが、ここらへんの話題はやはり専門的な内容になってしまうからなのか(あるいは上記の3要件がすでに基準として定着しているからなのかもしれませんが)、自分が耳にする範囲でもあまり多くないように感じます。障害というとどうしても補償といった部分に目が行きがちですが、その礎となっている認定基準や、それが社会的判断にどのようにかかわっているのかといったことにも関心を持っていかないとな、と感じた裁判でした。
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